ファンタジーの定義

ファンタジーの定義は曖昧だが、弁別的な特質として、作品内に魔法などの空想的な要素が(現実的には有り得なくとも)内部的には矛盾なく一貫性を持った設定として導入されており、そこでは神話や伝承などから得られた着想が一貫した主題となっていることが挙げられる。

そのような構造の中で、ファンタジー的な要素はどのような位置にあっても構わない。隠されていても、表面上は普通の世界設定の中に漏れ出す形でも、ファンタジー的な世界に人物を引き込む形でも、そのような要素が世界の一部となっているファンタジー世界の中で全てが起こる形でもありうる。

サイエンス・フィクション(SF)との対比で言うと、SFでは世界設定や物語の展開において自然科学の法則が重要な役割を果たすのに対し、ファンタジーでは空想や象徴、魔術が重要な役割を果たす。ただし、SF作品においても、現実世界には存在しない科学法則を仮定し、それに基づいた世界や社会を描く試みがその歴史の初期から存在すること、逆にファンタジー作品においても錬金術や魔法などに体系的な説明が用意されている場合があること、など、両者の線引きを困難にするようなケースがある。また執筆当時にそのような分類がなされていたかは別にして、SFとファンタジー双方の作品を発表する作家が居る事もあり、SFとファンタジー両方の性質を併せ持った境界線上の作品(SFファンタジー)も多数発表されている。

ファンタジーの定義を広く「仮想の設定のもとに世界を構築する作品」とし、SFをサイエンス・ファンタジーとしてファンタジーに含ませる考え方もある。SFとファンタジー双方の作品を発表する作家であるアン・マキャフリィなどは、SFはファンタジーのサブジャンルであると度々語っている。

また逆に、近代文学におけるファンタジーの形成と再評価の相当な部分、特にパルプ雑誌に代表される(児童文学に分類されない)大人向けの部分の多くが、先行して市場が形成されていたサイエンス・フィクションの市場の枠内で行われてきたという歴史的な経緯から、ファンタジーをSFの有力な一分派とする考え方もある。サイエンス・フィクション研究家であるフォレスト・アッカーマンやSF作家でSF史の著書もあるブライアン・オールディスなどもこの見解である。

どちらも極論ではあるが、この両者は明確な境界が存在し得ない程近しい関係にあるとは言えるだろう。これらを包括した呼称として「スペキュレイティブ・フィクション」がある。

なお、ファンタジー的(幻想的)を意味する英語の形容詞は「ファンタスティック」(fantastic)であり、日本で時として使われる「ファンタジック」というカタカナ言葉は本来の英語では誤りとなる和製英語である。